サカナカラ | For Fried Fish Fans

サカナカラの現在地

魚料理といえば、何を思い浮かべるだろうか。

刺身。

煮付け。

塩焼き。

干物。

魚は「焼くもの」「煮るもの」という整理が、どこかにある。

けれど、魚はずっと揚げられてきた。

各地に息づく魚揚げ

山口ではフグ。

宮崎や鹿児島ではメヒカリ。

静岡では桜えび。

東京湾沿いではハゼ。

北陸では甘エビの頭。

北海道ではコマイやホッケ。

高知ではウツボ。

瀬戸内では小イワシ。

名前は違う。

衣も違う。

油も違う。

けれど、魚を揚げるという行為は、確かにそこにある。


刺身という芸術

鮮度の良い刺身の、あのプリプリ感。

熟成させれば、ねっとりと旨みが立ち上がる。

昆布締めにすれば、味はさらに重なる。

刺身は、時間と温度の料理だ。

煮付けという包容

ほどけるような、溶けるような煮付け。

煮汁は捨ててはいけない。

冷めれば極上のゼラチンとなり、もう一品になる。

煮付けは、包み込む料理だ。

焼き魚という火との対話

かぶりつく焼き魚も最高だ。

できれば炭火がいい。

皮は弾け、脂は落ち、煙が香りを連れてくる。

焼き魚は、火と向き合う料理だ。


揚げるという選択

揚げる魚は、少し違う。

油の中で一気に熱を入れると、

魚は立体になる。

外側は香ばしく、

内側は閉じ込められ、

皮はパリッと弾ける。

骨さえも食べられる。丸ごとだ。

揚げることは、まさしく

丸ごと魚を前に出す行為だ。

焼きが素朴なら、

煮付けが穏やかなら、

揚げは少し大胆だ。

それなのに。

魚料理を思い浮かべるとき、

「揚げる」は、なぜか後ろにいる。


サカナカラ

けれど文化として見れば、

魚揚げは各地に息づいてきた。

サバカラ。

シャケカラ。

フグカラ。

カサゴカラ。

間違いなく存在しているのに、

なぜか思い出せない魚揚げに、

もう一度、名前を与えたい。

それが、サカナカラの現在地だ。