魚の唐揚げを作っていると、ふと疑問が浮かぶ。
素揚げ、粉、バッター。
この三つの揚げ方は、いったい何が違うのだろう。
油の料理なのだから、違いは油にあるような気がする。
しかし揚げ物を観察していると、どうも違う。
揚げ物の鍵は、むしろ 水 にあるように思えてくる。
揚げ物の中では水が暴れている
食材を油に入れると、すぐに細かい泡が出始める。
あの泡の正体は、水蒸気だ。
食材の中の水分が急速に沸騰して、外へ逃げていく。
つまり揚げ物の内部では、実は 水が沸いている。
油の料理というより、
油の中で水が暴れている料理と言った方が近いかもしれない。
この水の逃げ方をどう扱うか。
それが揚げ方の違いになっているようだ。
素揚げ
水がそのまま逃げていく揚げ方
素揚げでは食材の表面に何もない。
だから水蒸気はそのまま外へ出ていく。
すると表面は急速に乾燥する。
乾燥すると表面温度は上がり、香ばしい焼き反応が強く出る。
小魚の丸揚げが骨までバリバリになるのは、この乾燥が骨にまで及ぶからだろう。
ワカサギやメヒカリの唐揚げは、まさにこのタイプの料理だ。
食材を乾かしながら揚げている。
バッター
水の逃げ方をゆっくりにする揚げ方
天ぷらやフィッシュアンドチップスでは、食材は衣に包まれている。
この衣は、揚げると軽い多孔質の構造になる。
つまり小さな空洞がたくさんある層だ。
この層があると、水蒸気は一気には外へ出ない。
少しずつゆっくり逃げる。
すると内部は乾燥しにくくなる。
結果として、しっとりした食感が残る。
薄い衣なら蒸し料理だ。
厚い衣なら衣そのものも楽しむボリューム料理に変身するのもバッター液ならではの楽しみ。
ただし衣は断熱層にもなる。
だから骨まで乾燥させるような揚げ方にはあまり向いていない。
粉
二つの揚げ方の中間
唐揚げや竜田揚げは、粉をまとわせて揚げる。
粉は食材の水分を吸って、薄いデンプンの膜を作る。
この膜は、蒸気の逃げ方を少しだけ調整する。
面白いのは、この揚げ方がかなり自由なことだ。
粉をつけてすぐ揚げれば、かなり乾いた揚げ方になる。
粉をつけて少し置けば、半分バッターのような状態にもなる。
つまり粉揚げは、
乾燥と蒸しの中間にある揚げ方とも言える。
唐揚げのサクッとした感じと、内部のしっとり感が同時に生まれるのは、この中間性のおかげだろう。
揚げ物は水をどう扱うか
三つの揚げ方を並べてみると、少し整理できる。
素揚げは、水をどんどん逃がす揚げ方。
バッターは、水をゆっくり逃がす揚げ方。
粉揚げは、その中間にある揚げ方。
揚げ物とは油の料理であると同時に、
水をどう扱うかの料理でもあるのかもしれない。