魚を揚げる料理の話になると、どうしても避けて通れない料理があります。
天ぷらです。
魚を揚げる文化を考えるとき、まずここに立ち戻る必要があるように思います。
天ぷらは、日本で最も有名な揚げ料理であると同時に、
魚揚げの歴史の出発点の一つでもあるからです。
天ぷらは屋台料理だった
今の天ぷらは高級料理のイメージがあります。
カウンターで職人が一つずつ揚げる料理。
そんな印象を持つ人も多いでしょう。
しかし江戸時代の天ぷらは少し違いました。
当時の江戸には
- 寿司
- 蕎麦
- 天ぷら
という三大屋台料理がありました。
つまり天ぷらは
江戸のファストフード
だったのです。
しかも当時のネタの中心は
- キス
- ハゼ
- 小エビ
- アナゴ
など、魚や魚介でした。
江戸後期の風俗記録『守貞謾稿』にも
「江戸では魚を揚げる天ぷらが多い」という記述があります。
天ぷらはまさに
魚揚げ料理
として広まった料理でした。
屋台料理が高級料理になった理由
その天ぷらが、なぜ今のような高級料理になったのでしょうか。
はっきりした理由は一つではありませんが、いくつかの変化が重なったと言われています。
江戸後期から明治にかけて、都市整備の中で屋台営業が整理されていきます。
火災や衛生の問題もあり、屋台文化は徐々に減っていきました。
一方で料理屋文化が広がり、天ぷらは店で食べる料理として発展します。
さらに天ぷらは
- 油の温度
- 衣の濃さ
- 揚げ時間
といった繊細な技術が必要な料理です。
その結果、天ぷらは
職人料理として磨かれていった
とも言われています。
天ぷらが教えてくれる揚げ料理の本質
天ぷらを見ていると、揚げ料理の面白い本質が見えてきます。
揚げ物というと
油の料理
のように思えます。
しかし実際には少し違います。
揚げ物の主役は
むしろ
水分
です。
食材を油に入れると、内部の水分が水蒸気になります。
その水蒸気が外に抜けることで
- 表面はカリッと
- 中はふっくら
という状態が生まれます。
天ぷらは
水分を上手に逃がす料理
とも言えるかもしれません。
魚を揚げるという発想
魚は水分が多い食材です。
そのため揚げ物は少し難しく
- 油が跳ねやすい
- 衣が崩れやすい
という問題もあります。
それでも江戸の人たちは魚を揚げて食べていました。
薄い衣と強い火力。
そして香りの強いごま油。
こうした工夫で魚の揚げ物が成立していたようです。
魚揚げの世界はまだ広い
天ぷらは日本を代表する揚げ料理です。
しかし魚を揚げる方法は、天ぷらだけではありません。
- 唐揚げ
- 竜田揚げ
- フライ
- 丸揚げ
いろいろな形があります。
天ぷらは、その大きな入口のような料理かもしれません。
ここから少し視点を広げると
魚揚げの世界はまだまだ広がっていきます。