世界で最も有名な揚げ魚料理は何か。
フィッシュ&チップスはどうだろうか。
イギリスの街角。
新聞紙に包まれた揚げ魚とポテト。
酢をかけ、ビールと一緒に食べる。
この料理は19世紀、産業革命期のイギリスで広まったとされる。
揚げ魚はスペイン系ユダヤ人の料理「ペスカド・フリト(pescado frito)」が源流とされ、そこにフライドポテトが合わさって現在の形になった。
(出典:Panikos Panayi Fish and Chips: A History, 2014)
フィッシュ&チップスの魚
使われる魚は主に
- タラ(cod)
- ハドック(haddock)
いずれも大型の白身魚だ。
この点は重要である。
大きな魚は、背骨を外すだけで
大きなフィレ(骨のない身)になる。
つまりこの料理は
骨問題をほぼ完全に排除している。
厚い衣
フィッシュ&チップスの衣は
パン粉ではなく
バッター(液体衣)
である。
材料は
- 小麦粉
- 水またはビール
- 塩
ビールを入れる店も多い。
炭酸とアルコールによって
衣は軽くなり、揚げたときに空洞ができる。
そして衣はかなり厚い。
これは揚げるというより
むしろ
衣の中で蒸している
構造に近い。
外はカリッとし
中は水分を保った白身になる。
伝統の油
伝統的なフィッシュ&チップスは
牛脂(beef dripping)
で揚げられてきた。
牛脂は高温に強く、香りも強い。
淡白なタラとよく合う油だ。
現在は植物油も多いが、
牛脂を使う店も今なお存在する。
大きな揚げ魚
もうひとつ特徴がある。
魚が大きい。
かなり大きい。
これは料理の背景と関係している。
フィッシュ&チップスは
産業革命期の都市労働者の食事だった。
安く
高カロリーで
満腹になる。
つまり
巨大な揚げ魚+ポテト
という形が合理的だった。
七つの要素で見る
この料理を
サカナカラの七要素で見ると面白い。
魚
タラ(大型白身)
粉
小麦バッター
油
牛脂
サイズ
巨大フィレ
温度
高温
時間
短時間
水分
厚衣による保持
偶然かもしれないが
この料理は
かなり整った構造
を持っている。
江戸の天ぷら
ここで日本の話を思い出す。
江戸の屋台天ぷらである。
江戸前の魚介を
小麦衣で揚げ
屋台で食べる。
熱い揚げ物を
その場で食べる。
そして酒。
この構造は
フィッシュ&チップスとどこか似ている。
魚
衣
油
高温
短時間
文化も距離も違うのに
揚げ魚は似た形に落ち着く。
少なくとも
そんな気配はある。
揚げ魚は一つではない
ただし
フィッシュ&チップスは
揚げ魚の一つの形にすぎない。
魚は多様だ。
小魚もいれば
干物もあり
開きもあり
フィレもある。
そして
粉も
油も
サイズも
温度も
時間も
水分も
組み合わせは無数にある。
サカナカラの世界は
まだまだ広い。