魚は揚げにくい食材である。
骨が多い。
身は柔らかい。
水分も多い。
それでも世界には魚の揚げ料理がある。
ではどうやって揚げているのか。
料理を観察していくと、
魚を揚げる方法はおおよそ四つに整理できる。
小魚、フィレ、開き、乾燥。
魚揚げ料理は、このいずれかの技術を使って成立していることが多い。
小魚 ― 骨ごと食べる
最も単純な方法は、魚を小さいまま揚げてしまうことだ。
魚が小さければ骨も細く、
揚げることでそのまま食べられる。
日本では豆アジの唐揚げが典型的だ。
丸ごと揚げて骨ごと食べる。
福島や茨城ではメヒカリの唐揚げもよく知られている。
メヒカリは深海魚で骨が柔らかく、揚げると丸ごと食べられる。
海外でも同じ発想の料理がある。
Boquerones fritos(スペイン)
カタクチイワシを小麦粉で揚げる料理。南スペインの定番の酒肴。
Whitebait fry(イギリス)
稚魚をまとめて揚げる料理。レモンを絞って食べる。
魚が小さければ骨は問題にならない。
これは最も古典的な魚揚げの方法だろう。
フィレ ― 骨を取り除く
二つ目は、骨を外してしまう方法だ。
魚を三枚におろし、
骨を取り除いた状態で揚げる。
日本で最も有名なのはアジフライだろう。
中骨を外したフィレに衣をつけて揚げる。
海外ではこの方法が非常に多い。
Fish and Chips(イギリス)
タラやハドックなど白身魚のフィレを衣で揚げる料理。イギリスの国民食。
欧米では白身魚のフィレを揚げる料理は広く見られる。
骨を取り除くことで、揚げ魚は一気に食べやすくなる。
現代の魚フライの多くは、この方法に属している。
開き ― 骨を露出させる
三つ目は、骨を取り除くのではなく露出させる方法だ。
魚を開き、骨を揚げやすい形にする。
日本ではカサゴの唐揚げなどでよく見られる。
背びれのあたりから包丁を入れて少し開き、骨を露出させる。
また、頭を軽く叩いて骨を砕き、
油が骨まで通りやすくする技術もある。
この方法を使うと、中型の魚でも骨ごと食べやすくなる。
小田原で見られるアジの丸揚げも、
魚を開いて揚げることで骨まで食べやすくしている。
海外でも似た発想はある。
Pla Tod(タイ)
魚を丸または開いた状態で揚げる屋台料理。甘酸っぱいタレなどと合わせて食べる。
骨を避けるのではなく、
骨を揚げて食べられる状態にする。
これは魚料理ならではの技術だ。
乾燥 ― 骨と水分をコントロールする
四つ目は、揚げる前に魚を乾燥させる方法だ。
水分を減らすことで揚げやすくなる。
さらに骨も柔らかくなる。
日本では干物の天ぷらのような料理があり、
干した魚を揚げて食べる例も見られる。
海外ではこの方法はむしろ一般的だ。
Danggit(フィリピン)
干した魚(主にアイゴ類)を揚げる料理。セブ島の名物。
Ikan asin goreng(インドネシア)
塩干魚を揚げる料理。ご飯のおかずとして広く食べられる。
乾燥させることで、
水分と骨という二つの問題を同時に解決できる。
これも魚揚げ料理の合理的な方法だ。
魚揚げは技術の料理
こうして見ると、魚の揚げ料理は
単なる揚げ物ではない。
骨をどうするか。
水分をどうするか。
そのための技術が必ず存在する。
小魚
フィレ
開き
乾燥
魚揚げ料理は、このいずれかの方法を使って成立していることが多い。
そしてもう一つ重要なのは、
揚げ方そのものだ。
魚
粉
油
サイズ
温度
時間
そして水分。
魚を揚げる料理は、
まだ体系的に整理されているとは言いがたい。
しかし少なくとも、
魚揚げには一定の構造がある。
サカナカラを拓く。